沖縄のお酒と言えば泡盛ですが、その泡盛の中でも古酒(クース)といって泡盛を3年以上寝かせたものがあります。
今回は古酒の作り方や飲み方、古酒の定義などを紹介します。
古酒って普通の泡盛と何が違うの?
古酒は新酒の泡盛と比べると、まろやかで飲みやすくなり、バニラやキャラメルのような甘い香りに変化するものが多くなります。
また沖縄ではその呼び名にちなんで、9月4日をクース(古酒)の日としています。
沖縄では古酒の日があるくらい親しまれていますが、全国的にはあまり知られていないので、ぜひこの記事読んで泡盛の古酒について知っていただけると嬉しいです。
この記事は泡盛マイスターのももとが解説してるよ!
目次
泡盛 古酒の定義
そもそも泡盛の古酒の定義とは何でしょう?
『泡盛の表示に関する公正競争規約』では以下のように定められています。
【古酒の定義】
「全量を3年以上貯蔵したもの又は仕次ぎしたものでなければ古酒と表示してはならない。貯蔵年数を表示する場合は、年数未満は切り捨てるものとする。」
瓶の中に1%でも3年未満の新酒の泡盛が含まれていたら「古酒」と表示してはいけないということです。
また、例えば5年6ヶ月貯蔵していたものであれば、表記は年未満切り捨ての「5年」になります。
ちなみに、この規約が制定されはのは平成27年8月からで、それ以前は古酒が51%以上含まれていれば古酒と名乗れました。
昔は100%古酒じゃなかったんだね(^^;
泡盛 古酒の歴史
泡盛の熟成技術は中国から琉球に伝わりました。
中国にも独自のお酒がありましたが、昔は現在のように飲みやすい酒を造る技術も発達しておらず、長期間寝かせることで飲みやすい酒に仕上げていたそうです。
泡盛も昔は臭いがきつかったとよく言われていますよね。
長期貯蔵・熟成は先人たちの知恵でもあるのですね。
琉球王国時代には、中国からの冊封使たちを歓迎するために出された泡盛は、長期熟成された古酒でもてなしたと言われています。
泡盛 古酒 3年説と7年説
現在の泡盛の古酒(クース)の定義は3年以上寝かせたものですが、琉球王国時代では何年間熟成させたら古酒とされていたのでしょうか?
それには3年説と7年説があります。
古酒3年説
琉球を統一した尚巴志(しょうはし)は、即位3年目(1425年)に中国からの冊封使たちが来琉した際、3年古酒を献上したことから3年説が生まれたと言われています。
古酒 7年説
7年説は、尚敬王(しょうけいおう)が即位して7年目に来琉した冊封使たちを歓待するために用いた泡盛が、即位7年目の泡盛だったことに由来しているとも言われています。
泡盛 古酒の作り方
泡盛は甕だけでなく瓶詰めされたものや製造タンクの中でも熟成しますが、容器によって熟成度合いや風味も変わります。
一般的には瓶のものはゆっくりと熟成すると言われています。
買ってきた泡盛を3年以上寝かせておけば古酒になるよ
泡盛を寝かせる際は、温度変化の少ない暗い場所に置きましょう。
泡盛の仕次ぎ
泡盛の定義の中にも出てくる「仕次ぎ」について説明します。
古酒(クース)を作る際、瓶に入ったものをただ何年も寝かせるだけでいいのかと言うとそうではありません。
例えば10年を超えるような長期間熟成させる古酒の場合、泡盛の古酒を育てるための「仕次ぎ」という方法を取ります。
仕次ぎは琉球王朝時代からの古酒作りにはかかせない伝統的な技法です。
【仕次ぎの方法】
1.一番古い古酒を親甕(一番甕)に入れる
2.二番目に古い古酒を二番甕に入れる
3.新しい泡盛を三番甕に入れる
4.親甕から少し飲減った減った分を二番甕から取り出して親甕へ移す
5.二番甕の減った分を、三番甕から取り出して移す
6.三番甕の減った分は新しい泡盛を注いで全体の量を減らさないようにする
上記の手順を繰り返し泡盛を育てていきます。
仕次ぎによって古酒を熟成させていけば、何十年も古酒を寝かせることが可能になります。
戦前には200年ものの古酒もあったそうだよ
泡盛 古酒の飲み方
基本的に泡盛は、水割りやロックなど好きな飲み方を楽しめるお酒ですが、古酒を飲む際の一番のおすすめは「まずはストレートで香りと味わいを楽しんでほしい」です。
昔から古酒は貴重なお酒だったので、小さなお猪口のようなチブグヮーという酒器に入れてたしなまれていました。
泡盛は度数の高いお酒ですが、チブグヮーであれば少量なのでそんなに度数を気にすることもないかと思います。
ストレートが無理という方は氷を入れてロックにして、なるべく古酒の風味が損なわれないような飲み方がおすすめです。
古酒は新酒の泡盛より飲みやすいよ
泡盛 100年古酒の消失
かつて泡盛は琉球王朝時代、首里王府の管理下の元、首里にある決められた酒造所だけで製造が許可されていました。
当時は約100軒もの酒造所が集まり、100年、200年を超える古酒も存在していました。
しかし、沖縄戦によって酒造所は壊滅となり、現存する泡盛では首里の識名酒造にある約150年ものが最古とされています。
当時の識名酒造の店主が、首里に戦火が及びそうになると、泡盛の甕3つを地中深く埋めてから逃げたそうです。
のちに3つのうち2つが奇跡的に無地だったそうです。
100年 古酒 復活を目指して
王国時代のように100年ものの古酒を目指して、現在古酒を熟成させているのが、沖縄本島北部、本部町の山川酒造です。
識名酒造の150年ものの古酒は、残念ながら市場には出回っていませんが、山川酒造では市場に出すための100年古酒造りの取り組みが続いています。
ちなみに、100年古酒の最初の甕は、2097年に100年を迎えるそうです。
ももとは生きてない(涙)
次の世代まで平和な世の中が続き、100年ものの古酒が飲めることを願った素敵な取り組みですね。
泡盛の古酒まとめ
実は九州各地の焼酎は、王国時代の沖縄から伝わったのですが、九州では製造の過程で焼酎を「熟成」させることが消失してしまいました。
その理由として、日本本土には清酒があり早めに飲む習慣があったことや、製造方法の改良で熟成させなくても飲める焼酎になったためと言われています(銘柄によってはあえて古酒にしているものもあります)
伝統的な古酒造りが現在も普通に残っている沖縄の泡盛。
もっと注目を浴びてもいい世界に誇れるお酒だと思いませんか?
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