
泡盛って熟成させると古酒になると言うけど、一般の泡盛とどう違うの?
沖縄の地酒として愛される泡盛。その奥深い魅力のひとつが「熟成」です。実は、泡盛は熟成させることで、時を重ねるごとに味わいが変化し、特別な存在へと進化を遂げるのです。
では、泡盛は熟成させると一体何になるのでしょうか?その答えは「古酒(クース)」です。古酒とは、3年以上貯蔵された熟成泡盛のことで、その芳醇な香りとまろやかな口当たりは、まさに泡盛の芸術品。
しかし、「熟成」と一口に言っても、その過程は決して単純ではありません。熟成期間、貯蔵方法、環境など、様々な要素が複雑に絡み合い、泡盛の味わいを左右します。そのため、古酒の世界は奥深く、知れば知るほど魅了されること間違いありません。
この記事では、泡盛マイスターの筆者が、古酒の定義から熟成方法、おすすめの飲み方まで、古酒の魅力を余すことなく解説します。泡盛の古酒の世界に足を踏み入れ、あなただけの至福の一杯を見つけてみませんか?
- 古酒の定義
- 泡盛を熟成させる理由と方法
- 古酒の歴史
- 古酒のおすすめの飲み方

この記事は沖縄移住生活13年、泡盛酒造での勤務経験もある泡盛マイスターのももとが書いています。


目次
泡盛は熟成させると何になる?古酒についての解説

泡盛を熟成させたものは「古酒」と呼ばれ、沖縄の言葉で「クース」とも言います。泡盛は一般酒と古酒に分けられ、古酒は3年以上熟成させたものを指します。
ここでは、泡盛の古酒について詳しく解説していきます。
- 古酒の定義
- 泡盛を熟成させる理由
- 泡盛の熟成方法
- 泡盛の古酒の歴史
- 古酒3年説と7年説
古酒の定義
そもそも泡盛の古酒の定義とは何でしょう?
『泡盛の表示に関する公正競争規約』では以下のように定められています。
【古酒の定義】
「全量を3年以上貯蔵したもの又は仕次ぎしたものでなければ古酒と表示してはならない。貯蔵年数を表示する場合は、年数未満は切り捨てるものとする。」
泡盛の瓶の中に1%でも3年未満の新酒が含まれている場合、「古酒」と表示してはいけないということです。また、年数の表記については、例えば5年6ヶ月貯蔵していたものは、年未満切り捨ての「5年」となります。
この規約は平成27年8月から制定され、それ以前は古酒が51%以上含まれていれば古酒と名乗ることができたため、100%古酒でないものも多く存在していました。
泡盛を熟成させる理由

泡盛を熟成させて古酒にする理由は、熟成によって泡盛の味わいが劇的に変化し、よりまろやかで奥深い風味になるからです。
熟成の過程で、泡盛に含まれる成分が化学反応を起こし、アルコールの刺激が和らぎ、芳醇な香りが生まれます。また、時間をかけてゆっくりと熟成させることで、泡盛はまろやかで口当たりの良い、複雑な味わいに変化します。
熟成期間が長ければ長いほど、その味わいは深みを増し、希少価値も高まります。そのため、古酒は一般酒と比べて価格は高くなります。
泡盛の熟成方法
泡盛は甕だけでなく瓶詰めされたものや製造タンクの中でも熟成しますが、容器によって熟成度合いや風味も変わります。
ここでは、瓶と甕の古酒の作り方をそれぞれ紹介します。
瓶での熟成方法

泡盛の瓶での熟成方法は、自宅で簡単にできる方法です。
泡盛は、瓶の中でもゆっくりと熟成が進むお酒です。購入した泡盛を適切な環境で3年以上寝かせることで、まろやかな口当たりを持つ古酒へと変化します。
古酒造りの注意点は、温度変化の少ない暗所で保管することです。急激な温度変化は、泡盛の品質を損なう可能性があります。また、直射日光は泡盛の劣化を早めるため避けましょう。できれば、透明より黒い瓶の方が長期保管に向いています。
ただし、瓶で古酒にする場合は、仕次ぎができないので10年以内の古酒にするのがおすすめです。
適切な環境でゆっくりと熟成させることで、泡盛は時を重ねるごとに味わいを深め、唯一無二の古酒へと成長します。ぜひ、あなただけの古酒を育ててみてください。
甕での熟成方法:仕次ぎ

古酒の定義の中にも出てくる「仕次ぎ」について説明します。
古酒(クース)を作る際、甕に入ったものをただ何年も寝かせるだけでいいのかと言うとそうではありません。
例えば10年を超えるような長期間熟成させる古酒の場合、泡盛の古酒を育てるための「仕次ぎ」という方法を取ります。
仕次ぎは琉球王朝時代からの古酒作りにはかかせない伝統的な技法です。
【仕次ぎの方法】
①一番古い古酒を親甕(一番甕)に入れる
②二番目に古い古酒を二番甕に入れる
③新しい泡盛を三番甕に入れる
④親甕から少し飲減った減った分を二番甕から取り出して親甕へ移す
⑤二番甕の減った分を、三番甕から取り出して移す
⑥三番甕の減った分は新しい泡盛を注いで全体の量を減らさないようにする
具体的には、年代の異なる複数の泡盛を用意し、古い泡盛から順に新しい泡盛を継ぎ足していく作業を指します。例えば、最も古い泡盛が入った甕から少しずつ取り出し、減った分を次に古い泡盛で補充します。そして、補充された甕には、さらに新しい泡盛を継ぎ足していくというように、循環させていきます。
仕次ぎの目的は、古い泡盛の風味を維持しながら、新しい泡盛を加えることで、酒質の劣化を防ぎ、常に最高の状態を保つことです。また、異なる年代の泡盛をブレンドすることで、複雑で奥深い味わいを引き出す効果もあります。
仕次ぎは、泡盛の熟成を促進し、古酒としての価値を高めるための重要な工程です。適切な仕次ぎを行うことで、泡盛は世代を超えて受け継がれる貴重な財産となり得ます。
仕次ぎによって古酒を熟成させていけば、何十年も古酒を寝かせることが可能になります。戦前には200年ものの古酒もあったそうです。
泡盛は劣化するか
泡盛は適切に保存しないと劣化します。
泡盛は賞味期限のないお酒ですが、一度封を開け、光の当たるところに長期間置いておくなどすると、風味が落ちたりアルコールが飛んでしまうこともあります。
筆者は、2000年の九州沖縄サミットで作られた20年以上経過した泡盛を飲んだことがありますが、封を開けて保管してあったので、アルコール感が全くない水のようになっていました。
泡盛古酒の歴史

泡盛の熟成技術は中国から琉球に伝わりました。中国にも独自のお酒がありましたが、昔は現在のように飲みやすい酒を造る技術も発達しておらず、長期間寝かせることで飲みやすい酒に仕上げていたそうです。
泡盛も昔は臭いがきつかったとよく言われていますよね。長期貯蔵・熟成は先人たちの知恵でもあるのですね。
琉球王国時代には、中国からの冊封使たちを歓迎するために出された泡盛は、長期熟成された古酒でもてなしたと言われています。
古酒3年説と7年説
現在の泡盛の古酒(クース)の定義は3年以上寝かせたものですが、琉球王国時代では何年間熟成させたら古酒とされていたのでしょうか?
それには3年説と7年説の2つの説があります。
古酒3年説
琉球を統一した尚巴志(しょうはし)は、即位3年目(1425年)に中国からの冊封使たちが来琉した際、3年古酒を献上したことから3年説が生まれたと言われています。
古酒7年説
7年説は、尚敬王(しょうけいおう)が即位して7年目に来琉した冊封使たちを歓待するために用いた泡盛が、即位7年目の泡盛だったことに由来しているとも言われています。
泡盛は熟成させると何になる?古酒の飲み方
ここでは泡盛の古酒のおすすめの飲み方を紹介します。古酒は熟成された香りや味を楽しむため、水割りにはあまり向きません。
また、古酒は一般酒の泡盛よりまろやかで飲みやすいので、泡盛を初めて飲む人に最適です。
ストレート

泡盛の古酒を飲む場合、一番のおすすめは「ストレート」になります。古酒の熟成された芳醇な香りと奥深い味わいをダイレクトに楽しめる飲み方です。
小さなお猪口のような器「チブグヮー」に少量ずつ注ぎ、常温でゆっくりと舌の上で転がすようにして味わいます。古酒はアルコール度数が高いため、少しずつ時間をかけて飲むのがおすすめです。昔から古酒は貴重なお酒だったので、チブグヮーという酒器に入れてたしなまれていました。
ストレートで飲むことで、古酒本来の複雑な香りと、時と共に変化してきたまろやかな口当たりを存分に堪能できます。
ロック

どうしてもストレートが無理という方や、氷を入れてロックにして、冷やしてすっきりとした口当たりを楽しみたいなら「ロック」が良いでしょう。
大きめの氷に古酒を注ぎ、氷が溶けるにつれて変化する味わいを堪能できます。なるべく古酒の風味が損なわれないような飲み方がおすすめです。
パーシャルショット
少し変わった飲み方になりますが、冷凍庫で冷やした古酒をシャーベット状にして楽しむ「パーシャルショット」もおすすめです。
アルコール度数が高い泡盛は、冷凍庫に入れても完全には凍らず、シャーベット状になる性質があります。アルコールは水よりも凝固点が低いため、アルコール度数が高い泡盛は、一般的な家庭用冷凍庫の温度では完全に凍りません。代わりに、アルコールと水が混ざり合った状態で、シャーベット状になるのです。
パーシャルショットは、古酒のとろりとした口当たりと凝縮された風味が楽しめます。
泡盛は熟成させると何になるまとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 泡盛は3年以上熟成させると古酒になる
- 泡盛を熟成させる理由は味わいを変化させまろやかにするため
- 泡盛の熟成方法は瓶と甕では違う
- 甕での熟成方法には「仕次ぎ」がある
- 泡盛の古酒は中国から伝わり、昔は飲みやすくするために古酒にしていた
- 古酒には3年説と7年説がある
- 古酒のおすすめの飲み方は、ストレート、ロック、パーシャルショット
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